指圧との出会い
2002年11月
指圧師 木 村  浩


指圧との出会い 


 数年ぶりに体調を崩しました。熱は出さずにすみましたが、セキがとまらず、体のダルサにま

いりました。

よい機会だと思い、以前から興味をもっている、いくつかの民間療法を試してみました。

これらが功を奏したのか、なんとか病院へいくこともなく回復しましたが、体の不安は精神的な

不安定でもあることを、あらためて感じました。

どんなにお金持ちでも、体の具合がよくない時は精神的な不安定でもあるでしょう。

そんな時は誰でも、体調が良いときと同様の、平常な気持ちではいられません。

その逆に精神的なストレスが度を越すと、その影響が極端な形で表れた時、胃に穴があく胃潰

瘍などという事態になったりします。

体と心は密接に結び付いて、「互いに」影響をおよぼしていることは今では科学的にも明らか

なことです。

 
 僕は30代の後半に、こころの不健全を転換したいとの思いから、安定した職業から不安定

な自営業者として生き方を変えました。

その決断をした時に、「安定」と引き換えに「健全」を手に入れる、という意識を持ちました。

もちろん、少しでも安定的な生活をしたい、という願いはあるけれども、そのことを求めるあま

りに、自身の健全性がスポイルされることのないようにしたい、という気持ちがあります。


 転職したことで、これからは自分の体こそが、よりどころとして大切になると考え、まず体の

状態をよくしようと、運動を生活のパターンの中に取り入れました。

様々な運動とその方法を、いろいろな本で勉強しながら、ほぼ毎日数年間続けた事から、人の

健全性はこころだけでなく、体とも大きく関係することを実感し、この体験が、指圧との出会い

に大きく影響しました。

 こころと体を含めたトータルな意味での「健全」は、体の側からのアプローチが、もっとも分

かりやすく、そして効果のある方法です。

 生きていく事は、自分自身の体とともにあることであり、その体と向きあうということは、

健全を維持することのベーシックな方法の一つではないかと思います。

こころの問題は複雑になりがちですが、体と向き合う作業は、単純ですなわち分かりやすく、

効果のある方法だと思うのです。



 指圧を受けている時間は、自身の体をとても意識する時間でもあります。

大それた事を言うようですが、ぼくは 「 体を持つことの喜びを感じる 」 ことが指圧によ

って実現できるような、そんな指圧を目指したいと思っているのです。


                              2002年 11月


目次にもどる