指圧周辺   No001
2001年5月
指圧師 木 村  浩


予防としての指圧

 たいていの人は自分の体を意識する時は病気かケガをしてしまった時です。

しかし人の「健全」は日常のなかにこそあり、日々の仕事や人間関係といった生活のなかに

こそ、それはあるのでしょう。

しかし、生きていく上で、仕事や人間関係、生活全てを自分の都合の良いように変更してい

くことは誰にとっても不可能です。

そしてその日常にある悪い意味での様々なストレスが、病気というものの大きな原因となって

いることは周知の事です。(生活習慣病は文字通りの意味です。)

生きていく限り人は誰でも疲れるものであり、その疲れを日常の中でよいかたちで回復する、

という事が繰り返しあるべきです。

 疲れを日常の中でよいかたちで回復し、健全性を予防的に維持するものとして、指圧はま

ちがいなく大きな力となります。


全体へ働きかける指圧

 人はあらゆる要素を含んだ環境の中で生きているのであり、「部分」で生きている訳ではあ

りません。体のことで言えば、けっして一部の臓器だけが人の体を支えている訳ではなく、

その人の体を構成する全てがそれぞれの人生を支えています。

指圧は「全体」としての人の体に対して働きかけるのものであり、それが指圧の大きな力で

す。それは「部分」へも働きかける力となります。「全体は部分に影響を与え、部分は全体

に影響を与える」のです。

一定の時間をかけてする「全身指圧」に僕がこだわるのはそのような理由からです。


相性について

 指圧を含めて手技療法はすべて「触れる」行為です。指圧であればどの指圧師の指圧

でも同じ、という訳ではありません。ちまたでの評判がよければ、あなたにとっても良い、と

は限りません。人と人との関係、相性がとても重要です。

技術と人間性において相性がよいかどうか、あなた自身が全身で感じてその相性を判断

すべきものです。その判断基準はもっともわかりやすい言葉でいえば「気持ちが良いかど

うか?」です。それはとても意味のある事ではないでしょうか。

相性がよいと感じた指圧師の指圧を定期的に受けることは、おおげさでなく、あなたの

日々に楽しみと健康と健全性をもたらすことでしょう。


 残念な事に、時間をかけて体全体に対して行う指圧というものが現在の保険制度の枠外

にあり、これを利用できないことは、指圧師として収入を得る上で大きな障害です。

しかし妥協することなく経済的な面もなんとか両立させつつ、指圧本来の意味を伝えてい

きたいと考えています。

                               2002年 8月 加筆


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