指圧はイイなあ
2006年   2月
指圧師 木 村  浩


 息子が小学生の頃なんどかこんな経験をしました。

お腹が痛いといって僕のところに来て、「お父さんお腹サワッテ」と言ってきました。

僕は彼を寝かせてから彼の横に座り、彼のお腹の上に右手を、左手を彼の背中に入れて、

ちょうどお腹を挟むようにします。お腹を上と下から暖めるような感じで「触れて」い

るのです。数分そうしてると彼はラクになって、「もうイイ」と言って僕の手を払いパ

ッと起きて遊びにいってしまう、そんなことが何度かありました。もちろんお医者さん

やクスリの世話になったこともあります。しかし10回のうち8回か9回はそれで済ん

でしまいました。もちろん、僕に特別の能力があった訳ではなく、指圧に出会っていた

からこそ、その効果を信じてやったのですが、これが指圧の本質的な意味するところで

ある、というのが僕の考えです。指圧はイイなあ、指圧に出会ってよかったなあ、と何

ともいえぬ幸せを感じたものです。



 少し前に、「子供を抱きしめよう」というキャンペーンをテレビで何度も目にしまし

た。親が子供を抱きしめる、という行為をテレビで教えなくてはいけない時代になって

しまったのか? ましてや文字通りの「手当て」という行為の力をいったいどれだけの

人が信じているか? 「手当て」という行為を受け継でいく連鎖が、科学を手にしてか

らいつの間にか切られてしまった。手当ての力を誰も信じていない・・・そんな気持ち

をもったりします。


 その行為によって、体から心へ、心から体へ作用することを伝えていく事は、指圧師

としての自分の役割の一つだと感じています。


                             2006年 2月




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