2013年はイシとユキで始まった



 年末は尿菅結石というものを経験した。

その痛みには格闘技の猛者ものたうちまわる、という。

最初は突然の腰の激痛に襲われた。その痛みがいわゆるギックリ腰のたぐいのものでない

ことは直感したが痛みは2時間ほどでおさまった。それから一週間後の晩に再び激痛に見

舞われた。一晩中痛みに耐え、翌朝一番に這うようにして近くにある大きな病院に救急で

入った。 エコー、レントゲン、そして初めてのCTの検査をした。



診断は、「尿管に石があります。5ミリ〜1センチ程度の大きさで、一ヶ月程度で尿と共

に、排出されるはずです。その間は水を沢山飲み、縄跳びなどをして石が下がるようにし、

痛みに襲われた際は痛み止を使ってやり過ごし、なんとか頑張って下さい」とのこと。

もっと大きな石であれば、体外から衝撃波をあて石を粉砕する、という大した装置がある

らしいが、この場合には使えないという。

それにしても、最新の設備がある病院は診断が早いということがよく分かった。最新の設

備イコール最適な治療を保証するものではないだろうが、近所の診療所であれば診断の確

定にもう少し時間を要したにちがいない。


そんな訳で年末は昼夜関係なく約8時間毎に襲われる痛みに耐え、耐えられなくなると痛

み止の座薬を使う、という毎日を過ごした。とても縄跳びなどできる状態ではない。しか

し、石が下へとさがるのを期待して、痛みがひどくないときには振動が下腹部に伝わるよ

うに跳ねるようにして歩いた。怪しいオヤジに見えたにちがいない。

約3週間後、石は尿とともに排出された。便器の斜面にくっついていたその石は6ミリ×

5ミリの楕円形の軽石状だった。記念として回収した。

その日は正月元旦の早朝5時であった。カミサンから「おめでとうございます」と言われ

た。大袈裟だが、そのタイミングには神秘的なものを感じた。

体の中に出来た石が出てしまえば、それで解決してしまうのだから、病気の範疇でないよ

うに思わぬでもないが、その痛みは噂にたがわぬものだった。 

痛みに苦しみながらも、いい経験をしていると思っていた。それは、命に別状があるよう

な病気ではないという余裕もあろうが、痛みがないことがあたりまえのように過ごせるこ

とがなんと有難いことであるかを文字通り痛感できたし、たかだか5、6ミリのイシのせい

で、自分と言うものを一定に保持できないイシの脆弱さがよくわかったからである。

 以前にも書いたことだが、やはり自分の体ほど感謝の対象として相応しいものはない。

体に手を回し、「ありがとう」と自分を自分たらしめてくれる体にあらためてつぶやいて

いる。


 

  雪は全てを純白に、家の窓から


 1月14日は関東地方に9年ぶりという大雪が降った。雪はいい。すべてを覆って純白に

してくれる。  日が沈んでから一人で荒川の土手に登った。暗くそれでいて白い静かな

世界を一人歩いた、遠くで犬が鳴いていた。

その晩遅くなってから家の前の歩道をゼイゼイしながら20メートルほど雪かきをした。翌

日その雪かきをした部分だけはアイスバーンになることをまぬがれて、通行する人にわず

かばかり役にたった。道はカミサンによってキムラヒロシ道と名付けられ、後の二日間だ

けその功績をホメタタエられ、やがて忘れられた。




 深夜のキムラヒロシ道


 翌日は仕事に行くのに、長靴で一時間半歩く羽目になった。その疲れること。

 これだから、雪は迷惑この上ないのである。


         言っていることがチガウ・・・    2013年  1月



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