運動をはじめる
2003年2月
指圧師 木 村  浩


運動をはじめる 


 子供の頃から、特定のスポーツを一生懸命にした、ということはありませんでした。

運動というものに意識して取り組んだのは、30代の後半からです。転職をきっかけとして、

「体が資本」、という気持ちを強く感じた事から、運動を生活の中に取り入れました。


 運動の習慣から遠ざかっている人が、どうしたら運動を現在の生活パターンの中に、新しく組

み入れていく事ができるか? 意欲はあっても、体に負担がかかる運動というものを新たに始め

るのはなかなか難しい事だと思います。

運動習慣をつけるために、自分なりに以下の点がポイントではないかと感じています。


1.運動と休養はセットで考える

2.記録をとる


1.運動と休養はセットで考える

 運動というものは、やっぱり疲れるものです。肉体的にも精神的にも余裕がなければ、「気持

ちイイ」という感覚は味わえないと思います。運動習慣がない人にとっては、やはり「疲れる」

という印象を強く感じてしまいます。僕は最初、運動と休養をセットで取る、というように

しました。

例えば、一時間の運動をしたら一時間のゆっくりした時間をとる、という具合です。運動の後に、

ちょっとでも寝るとか、シャワーをあびてからゆっくり食事をとる、というように。

週に一回の休みがあれば、その日は朝ゆっくりおきる、ストレッチして運動する、シャワーをあ

びる、腹ペコで昼飯を食う、疲れて昼寝する、運動する幸せを感じる・・・そんな具合に、運動

と休養をセットにして、休養によって運動の疲労を心地よいものと感じる経験を重ねてゆく。

慣れてくると運動後に休養が必ずしも必要でなくなります。


2.記録をとる

 ノートでもカレンダーでも、簡単にその日の運動内容をメモしておく、何歩、もしくは何分歩

いたか、とか、腹筋何回、ジョギング何分、腕立て何回、ストレッチ何分、プール何メートルと

か、あとウエストのサイズを毎週測る、とか・・・ どんなデータを記録するかは、自分なりに

工夫する。しかし、データそのものにはあまり固執せず淡々と記録してゆく。(データに固執す

ると、無理をして、「楽しみ」から遠ざかってしまう)がんばって続けて、しばらくしてから、

そのデータを眺めてみると、「今週は結構頑張ったぞ」とか、「最近さぼってるな」とか、「以

前より腹筋の回数をこなせるようになったな」とか・・・はげみになるし、運動の効果を数字で

確認できるのは、おもしろいものです。データをとって時々眺めてみるのは、継続への動機付け

になるのではないでしょうか?


 運動の内容については、特に最初のうちは運動による疲労というものが、心地よい、という感

覚を味わえるようにすべきで、そのためにはあまりキツイ運動ではなく、休養時間に応じた、自

分なりの、運動内容を設定すべきで、テレビや雑誌の情報に惑わされることなく、自分自身の

経験を踏まえながら、その方法と量を見つけていくべきです。




 宇宙飛行士は、無重力の宇宙から地球に戻ってきた時に、地球の重力に耐えられず満足に歩く

ことすらできないそうです。現在は宇宙に滞在中に、地球に戻った時のためにトレーニングを

欠かさないそうです。無重力は自分の体重から解放されるラクな環境ですが、この事は使える

機能は使わずにいると、やがて衰え、そして問題を引き起こす。という事を示しています。使え

る機能は使わなければモッタイナイし、使えるはずのものが使える、という事は、幸せなことで

す。



 自分の体を意識するのは、たいていの場合、否定的な状態になったときではないかと思います。

怪我をしたり病気になってしまった時に、はじめて体というものが強く意識される。僕自身もや

っぱりそうです。しかし、運動している状態は、病気や怪我ではない肯定的な状態で自分のから

だに向き合っている時間です。

 からだは、いのちの最も具体的なカタチです。からだと向きあう、という事は、大げさかもし

れないけれども、「いのちと向きあう」、ということと同じことではないか?という気がします。

もっと精神的、あるいは静的な方法もあるでしょうが、体を動かす、という事はシンプルで、す

なわち分かりやすく、いろいろな意味で効果のある方法だと思います。



                              2003 年 2 月


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