ロボットに学ぶ?
2003年 4月
指圧師 木 村  浩


ロボットに学ぶ? 


 毎年、ロボット展示会(ロボテックス)なるものが開催されているそうです。

手塚治虫の漫画、鉄腕アトムの誕生日が2003年4月7日に設定されていた、という話題も手

伝って今年のロボット展示会が特別の扱いになり、ニュースや雑誌で取り扱われました。

小学生の頃、テレビの鉄腕アトムを夢中になって見ていましたが、アトムの物語によって、子供

時代に形成される道徳観のようなものに影響を受けたのは、自分一人ではないような気がします。

ロボットという言葉には否定的な意味もありますが、それを強く感じないのは、やはりアトムの

存在が大きいからでしょう。


 近年、車産業に代表される製造業現場での「自動機械」としての産業ロボットから発展し、人

間と「コミュニケーション」するロボットへと進化してきました。まさに鉄腕アトムの世界です。

今回のロボット展示会で発表されたロボットの多くも、人間とコミュニケーションをとれるロボ

ット、という方向性が鮮明になってきているそうです。



アイボの秘密

 数年前、ソニーのアイボ、という犬の形をした人間とコミュニケートするロボット犬が話題に

なり、この分野でソニーは大成功を収めました。ソニーにはアイボの購入者から、季節ごとに

写真や礼状が届き、まるで家族と同じような存在になっていることを知らせてくるそうです。

アイボの技術的特質を理解する理科系の持ち主でさえ、機能以上の反応をしているような「錯

覚」を覚えてしまい、カワイイとか、いとしい、といった感情をもってしまうそうです。

アイボには経験や感情に合わせた、様々で膨大なパターンが記録(記憶?)されており、持ち主

とどんなコミューケーションを経験してきたかにより、反応が異なるそうです。

基本的にはスイッチを入れた瞬間に動き出すオモチャと同じ理屈ですが、膨大なデータに基づい

た多様な反応はソニーの開発陣でさえも予測できないそうです。

持ち主と過ごした時間を共有し、学習したアイボは他のアイボとは違う特別の存在になる、その

繰り返しによりアイボと持ち主との関係性が「成長」するのかもしれません。その成長?過程の

蓄積が持ち主に錯覚をおこさせ、ロボットではない方の人間の感情を刺激するのでしょう。



交換されたらウチの子じゃない?

 故障によって修理しても、かえって高くつくので新品との交換にしたほうがよい、と薦めても

多くの持ち主がそれを拒む。「交換されたらウチの子じゃなくなる」、というのが、バンダイの

ロボットおもちゃ、プリモプエルだそうです。手足は動かないぬいぐるみの中にコミュニケーシ

ョン用のコンピュータを組み込んだものだそうです。言葉によるコミュニケーションがとてもよ

くできていて、それに魅了された女性を中心に口コミで広がり、発売3年で70万個も売れたそ

うです。アイボと同様に条件により複雑なパターンがあり、相手によって全くちがう言葉がでて

くるそうです。それが一緒に暮らす家族同様の扱いを受けることにつながったのでしょうか。そ

の開発コンセプトは今や流行語になってしまった「癒し」だそうです。

バンダイの開発陣は、「どんな言葉が求められているか?」「愛とは何か?」「癒して欲しい時

はどんな時か?」「共に暮らすとは何か?」、そんなことを一年間もディスカッションした後に

製品化したそうです。



 どうやらソニーのアイボや、バンダイのプリモプエルの人気の鍵は人間にあるようです。

新しい方向性をもったロボット開発で、重要なのはロボットではなく、あくまで感情は人間にあ

って、人間が感情を有している、ということが主題のように思われます。

人間は何によって感情が影響されるのか?その鍵はどこにあるのか? ロボットの構造ばかりに

心を奪われる前に、人間自身の感情をしっかり捉えることが先になくてはならないようです。

僕は今までロボット開発は科学のジャンルであると思っていました。しかしロボットの研究・開

発は宗教、哲学を含んだトータルな意味での人間研究の新しい未来を切り開くのかもしれません。

 一ファンから言わせてもらえば、30年以上も前に手塚治虫の漫画として生まれた「感情を持っ

たロボット」鉄腕アトムは、ロボット(=科学)と人間の関係を描いた物語の中で、人間そのも

のをリアルに描いていたのです。




・・・でも、やっぱり生身の人間との関係の中で癒されたいナ・・・・・
                                     2003年  4月


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