でもやっぱり、たまには肉くおう!
2004年 9月
指圧師 木 村 浩
でもやっぱり、たまには肉くおう!
地球のウラ側なら「ありがたい」?
前回、帯津三敬病院のことに触れましたが、そこで食事指導をしている幕内秀夫さんという
方は「日本の豊かな風土から生まれた豊かな食生活」としての「粗食」を提唱しています。
食養法に関して多くの著作がありますが、帯津良一さんとの共著(※1)の中で次のように言
っています。
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・・・人間は地球上の様々な環境におうじて、草一本はえないような環境であっても生き抜
いてきた。現代の栄養学から見ると、とても理想的とはいえない極端なアンバランスな食生活
でも何千年、何万年とその「地方」で生活してきた・・・海外の様々な地方ごとに食べている
ものがまるで違うということに気がついたのです。たとえば砂漠地方では、食事のバランスが
とれているどころではない、ほとんど野菜を食べない生活でも、それでもちゃんと生きてい
る・・・イヌイットの人たちのように、氷の上に住んでいる人たちは、もともとはアザラシや
シロクマなどの肉だけの食生活で、野菜も果物も穀類もイモ類も食べなかった、それでも何万
年と生きている。それがあの地方で生活する人々にとって、バランスのとれた食生活というこ
とです・・・赤ちゃんのときから死ぬまで、肉100%の食生活です。でも考えてみれば、イ
ヌイットが暮らしてきた零下40度とか50度という環境の中で、何を食べたらいいのか?零
下40度なんていう寒さのなかでは、おそらくご飯なんかを食べていたのでは体温を保てない
から、高脂肪な肉を食べているのだろう・・・
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そして「なぜ、そんな食生活でこんなに元気なんだろう?と考えたときに、ある共通性を見
つけた」、と述べています。それが「土産土法」ということです。栄養学的にどうこういうよ
り、「土産土法」という物差しをもつほうが、食生活に大きなまちがいがおこらない、と言っ
ています。「土産土法」というのは、その土地で季節にとれるものを食べる、ということです。
もっとわかりやすく言うと、「たくさんとれるものを、たくさん食べる、滅多にとれないもの
は滅多に食べない」ということです。その立場から考えると、日本の風土に生きている日本人
が何を食べたらいいのか? その判断基準が見えてきます。経済的にも合理的ですし、お金持
ちでなくても理想的な食生活をおくれる、ということが分かってきます。
いくら栄養学的に素晴らしくても、地球のウラ側にあるものを、ありがたがって食べる必要
はなさそうです。テレビでは連日のように、遠い国の長寿食なんていう情報番組が氾濫してい
ますが、なんだかそんなテレビ番組がアホらしく思えてきます。
欲をもとめると、知恵を失う?
もう一冊、『地球 買いモノ白書』(※2)から。この本は、現代社会を代表するいくつか
のモノの、生産から流通、消費、廃棄にいたる過程を追ったストーリーが、一つの典型例とし
て書かれています。そのストーリーを追っている過程で、環境破壊や、発展途上の国々の人権
侵害といった問題が見えてきます。
その中のひとつのテーマに、食肉の生産から消費までを追いかけている所で、数字のデータと
して気になる部分がありました。それは次のようなものです。
ビーフステーキ : 200g = とうもろこし 1.4kg
鶏のから揚げ : 200g = とうもろこし 440g
つまり、牛肉1kgを生産するのに7kg、鶏肉の場合には2.2kg、の穀物を必要とする、
ということです(※3)そして次のような記述があります。
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世界の人口60億人、そのうち8億人が慢性的な飢えに苦しんでいます。世界には食料が足
りないのか? 実は世界では1人あたり年間300kgの穀物が生産されています。しかしこ
のうち約4割は家畜のエサにまわっているのです。つまり、飢えに苦しむたくさんの人々がい
る一方で、先進国の肉食を支えるために大量の穀物が消費されているのです。また家畜が1日
に排泄する糞尿は、鶏は1羽約130〜140gですが、豚は約5.4kg、牛にいたっては
1頭約50kgです。糞尿にはリンや窒素などの栄養分が豊富に含まれています。ところが、
農場では科学肥料を用いるため、こうした栄養分は大半が畑に還元されず、多くの場合たれ流
されて、地下水や河川を汚染しています。
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これを読んだとき、前述の「粗食」について連想したのです。歴史的にみても、日本人には
牛肉を食べる習慣はありませんでした。幕内秀夫さんは、「日本人にとって肉は、生きるため
にはとくに必要ない」といっています。さらに「これは根拠のないことですが、考えてみれば、
ライオンにせよ狼にせよ、みんな自分の捕まえられるものしか食べません。そう考えれば、プ
ロレスラーぐらいの人はたまに肉を食べてもいいのかもしれませんね。でも普通の人はニワト
リをうまく殺せるぐらいが関の山でしょう・・・」
世界の食料事情や環境のことを考えても、すくなくとも日本人にとって、肉を食べるというこ
は生きるうえでの重要なことではないようです。人の歯の構造も肉食を前提とした機能を重視
してはいません、さらに、現代人が生活習慣病のという厄介な問題を抱え込んだことを考えて
も、肉食は検討すべき事柄のようです。
そうはいっても、「 たまには肉くいたい! 」
ご安心を、幕内秀夫さんはこうも言っています。
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私たちの食事というのは、生きるための食事と楽しむための食事があるわけです・・・心ま
で含めて健康を考えたら、楽しみのための食事も無視できません。でも、体と心のバランスを
考えると、楽しみのための食事は二割程度が適当だと思います・・・
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きっちりやると息がつまるからネ、、たまには「肉くおう!」
※1、帯津良一、幕内秀夫・共著『なぜ「粗食」が体にいいのか』(三笠書房)
※2、『地球 買いモノ白書』(どこからどこへ研究会著、コモンズ)
※3、レスター・R・ブラウン著/食料白書−回避のための緊急シナリオ/1996年
大阪、池田小学校の事件の件。犯人の死刑が執行されました。最後まで犯人は人間の気持ち
をもつことがなかったそうです。被害者の親達はこの先、普通に生きていくいくことができる
のか? 時代や、犯人の育った環境や、心理を分析すればこの事件を理解することができるの
か? どんなに説明されても僕には理解できそうにない。考えるほどに、ただひたすらに混乱
してしまう自分がいます。刑が執行されても決して終わっていない。 人々の心になにも終止
符を打ってはいない。 これはいったい何なのか? 僕たちはなにを信じたらいいのか? 人
間っていったい何なのか? 人間っていったい?
2004年 9月
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