風に吹かれて
2009年 9月
指圧師 木 村 浩
15年間続けてきた運送屋家業を終えることになった。というのもこの不景気で仕事がめ
っきり減ったからである。自分の都合としてはもう少し運送業を続けたのちに、ライフワー
クである指圧に専念しようと考えていたが、自分にふく「風」が自分の背中を押して、また
新しい生活へと向かわせたように思う。
大袈裟だが、自分のまた新たな人生がスタートしたような気がしている。
経済的には少々ピンチに陥ったが、仕事を完全に失った、という訳ではない。それどころ
か、やりたい仕事があり、それをさせてくれる「場」を与えられていることの幸運にあらた
めて感謝している。これからは指圧を自分のただひとつの仕事として残りの人生を過ごして
いきなさい、と自分の背中を押す風が吹いたのだろう。
お世話になった多くの人達、自分を求めてくれる方々、たよりのない自分を支えてくれるカ
ミ(神?)サン、息子、さまざまな出会い。そして今という時代。
それらが風となって、良くも悪くも自分の背中を押したり、ときに引いたりする。
その風がときに辛くとも、たまに自分を勇気づけてくれることもあるから、なんとかめげず
に歩いているのだろう。
考えてみれば、自分の強い意思で人生を生きている、と胸を張って言えるような生き方を
していない。風が吹けばそれに従っていこう、というような気持ちでこれまでずっとやって
きたように思う。強固な意志の力でここまできた訳ではなく、今、自分に吹いている風に無
理に逆らっていないだろうか、という事を気にしながらやってきた。 だから誰かに、いか
に人生を生きるべきかを説くことは到底できない。そんな主体性のない自分を情けなく感じ
ることもあるが、正解はただ一つではないだろうと思う。自分の外から吹いてくる風、自分
の内部に吹いている風、そういう風を感じて生きていこうと思う。というより、主体性がな
いから、そうやって生きていくしかない自分だと思う。
たまに自分を勇気ずけてくれる風が吹けば、その風に吹かれてなんとかやっていけるので
はないかと思うのである。
2009年 9月
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