自分の評価は他人が、





 ■待つ仕事  


 今日は1日ヒマだった。

会社勤めではないから毎日決まった曜日、時間に仕事がある訳ではない。

入っていた仕事がキャンセルになってしまってヒマになる時もあるし、朝起きて今日は仕事

が入ってないから掃除をしたり洗濯をしたりボオっとしたりしているとスマホにメールや電

話が入って急に仕事が入る時もある。そんなふうに、誰かが自分に仕事をくれるのを待って

いる。


 仕事が順調な時はいい気になる、ヒマが続けば不安になる。すでに故人である自営業者の

先輩で内装業をしていた友人は、「自営業者は仕事があるときにはできるだけ稼ぐ、ないと

きはあきらめてのんびりする」また「仕事が忙しいのも辛いが無いのはもっと辛い」とも言

っていた。自営業者のかけだしの時はそんなものかと思っていたが、しばらくしてそれが身

にしみてわかった。


 子供が成人するまでは仕事が無いことに危機感を感じた事が何度かあったが、無事に社会

人となった時は大分気持ちが楽になった。

幸か不幸か、逃げだしたくなるほど忙しくした覚えもないが、自殺したいほどヒマなことも

なかった。 カミさん・息子、すでにあっちに逝った父母、お世話になった方々、日本とい

う国、生まれた時代、様々な目に見えないもの・・・それらに守られて仕事にありついてい

られた。




  ■自分の評価は他人が、


 仕事をもらえなければ稼ぎもない、稼ぎがなければ食っていけない。そしてその仕事は自

分以外の誰かが自分のことを信頼・評価してくれて初めて得ることができる。自分が自分を

評価するのではなく、世間が自分を評価する。

若い時分はほとんど何の根拠もなく自分のことを過大に評価するものかもしれない。しかし、

折に触れて社会からの評価・信頼を得ようと努力することを重ねていくことが成長するとい

うことなのだろう。それは自営業者である事とは関係なく人間的成長の過程だ。


 無人島でたった一人で生きている訳ではない。「社会の中でしか自分は存在できない」と

いう当たり前のことに人生のもう少し早い時期に気づいていれば良かった。しかし、いくた

びかのチャンスを与えられて、仕事を得て今生きていられる事は幸運でしかない。





   時期が来なければ理解できない事はあまりに沢山ある 間に合うだろうか

                                2017年 5月





     

    ぜんぶ自分の歯ブラシ。気分によって使い分ける。 ささやかな楽しみ



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